ブックレビュー|我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち

公開日: : ブックレビュー

 NHKで2018年4月から7月にかけて計3話が放送された「NHKスペシャル 人類誕生」。高橋一生さんが案内役として出演されたドキュメンタリー番組で、3話とも興味深い内容でした。

 その3話目にゲストで出演されていたのが人類進化学者の海部陽介さん。国立科学博物館人類研究部研究主幹。国立天文台ですばる望遠鏡計画の責任者を努めたこともある天文学者の海部宣男さんの息子さんなんですね。

 本書「我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち」(講談社)は小説家・ノンフィクション作家の川端裕人さんが海部陽介さんに密着取材して、その研究内容を解説したものです。

 地質学的な年代で言えばつい最近まで地球上には原人、旧人、新人の様々な種の人類が同時期に存在していたという最近の研究成果を紹介し、ではなぜ「今」我々新人=ホモ・サピエンスの単一種しか存在しないだろうか、と疑問を問いかけます。そのような状況を冒頭で「寂寥感」と表現しているところが印象的。最後には宇宙にまで話題が及びます。

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 この本を読む前に海部陽介さん本人による「日本人はどこから来たのか?」(文藝春秋)を読んでいたのですが、こちらは研究者本人が書いてはいるものの、とにかくわかり易さを優先させたのか、あっさりとした印象でした。
 
 一方で本書は専門外の著者が一般の読者に近い目線で研究や発掘の現場を取材している一方で、全くなんの知識もない素人という立場でもなく、元々こういったテーマに興味を持っている読者に近いレベルで話を展開しているので、とても知的好奇心をそそられ一気に読み進めることができます。インドネシアの複数の発掘現場も実際に訪れていて、話の内容も論理的です。海部陽介さんのこれまでの研究内容も、おそらく本人が語るよりもその優れた実績が上手くまとめられているのではないでしょうか。

 フローレス原人や澎湖人、デニソワ人といった新しい話題も豊富で、今まさに議論が続いている現在進行形の研究の現場をリアルに紹介しています。人類学の分野でこういった内容の本はこれまで無かったと思います。著者が取材の中で発表前の情報を内緒の約束で教えてもらったエピソードがありましたが、そのような信頼関係を築けたから書くことができた本だと思います。やはり科学ジャーナリストの仕事って重要だなと思いました。

 写真がいくつか掲載されているのですが、カラーだったら良かったなと思います。ブルーバックスだからしょうがないか。インターネットで同じ写真がカラーで公開されていますね。

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