ブックレビュー|火山で読み解く古事記の謎

公開日: : ブックレビュー

 2017年9月下旬頃から鹿児島県の新燃岳の火山活動が活発になり、10月11日には噴火警戒レベルが3まで引き上げられました。このような霧島山系や桜島など南九州地方の火山活動に関する報道を目にするたびに、昔読んだ石黒耀の小説「死都日本」を思い出します。

 気象庁が発表している噴火警戒レベルは気象庁のHPでも確認できますが、スマホアプリやNHK、テレビ朝日のデータ放送でも簡単に見ることができ、国内の火山がいまどのような状況なのかいつでも最新の情報を知ることができます。

 気象庁はその他にも解説情報、観測情報、降灰情報など火山に関する様々な情報を発表していて、中でも2015年より気象庁で運用を開始した「噴火速報」は噴火の発生を簡易な内容で素早く伝達する情報で、過去に3回発表されています。火山を常時観測する仕組みは世界中に存在しますが、それらを放送局や個人が所有するスマホなどを通じで国民に対して情報をあまねく瞬時に伝達するインフラが存在するのは日本だけでしょう。

 そのような情報配信インフラは国の主導だけで構築できるものではなく、放送局や地方自治体、民間の気象会社などに、使命感をもった一部の意識の高い人間がいるからこそ実現できていることはあまり知られていないと思います。

スポンサーリンク

 

 南九州地方では縄文時代に大規模な噴火が発生し壊滅的な被害を与えたという話はかなり前から知っていました。この噴火が発端となって縄文人が海洋に進出し、その子孫が南太平洋の島々や南米にまで到達した、なんていう説は一般向けのテレビ番組でも取り上げられていました。

 「死都日本」の中でももちろん触れられていて、九州地方に限らず世界的に見ても古代の人間活動と地質学的なイベントとの関連は興味深いテーマです。

 という訳で背表紙のタイトルだけで手に取り読んだのが本書「火山で読み解く古事記の謎」(蒲池明弘 著)。古事記の中の南九州と出雲を舞台にした記述が縄文時代の火山活動に深く関連しているという説が紹介されています。

 この類のテーマの書籍や記事は批判も含め年配の方が机上の妄想だけで突っ走っている、いわゆるトンデモ本の部類に入りかねないモノが多々ありますが、本書は著者が元新聞記者ということもあり、現地の取材や調査、専門家へのインタビューに基づき、著者独自の考えや主張はあるものの比較的客観的な立場で書かれています。Wikipediaに多く言及されているのはどうか、、、とは思いますが。

 専門的な言葉は少なく、また古事記に詳しくない人でも読みやすく、同類のテーマに対する入門書的な位置付けで読めると思います。過去の研究者の説が多く紹介されていて、物理学者の寺田寅彦も古事記に多く言及していたことは初めて知りました。そういえば「神話と地球物理学」という本がありましたね。

 古事記の内容が火山活動と何らかの関係があることは多くの人が納得できる話ではないかと思いますが、例えば天岩屋戸神話を7300年前の「鬼界カルデラ」噴火に結びつける具体的な話となると、古事記編纂までの約6000年の間に文字も無く平均寿命も現代と比べ非常に短い社会の中でどのような形で伝承されてきたのか、という点が明らかにできない以上、あまり細かい部分の解釈の議論にどの程度意味があるのか、とも思います。

 そうだとしても、縄文時代というと大昔の原始時代のイメージを持つ人がほとんどだと思いますが、地質学的な時間軸のスパンで見るとつい最近の出来事であって、関東地方では地面を掘るとあちらこちら至る所で遺跡が出てくるような、そんな時代です。

 日本国内の火山活動の観測技術が現代においてこれだけ進んでいるのも日本人にとって宿命だからであって、縄文時代にまで起源を持つ文化や精神が神話や神道の世界だけでなく、今に至るまで多くの普通の日本人の中に形を変えずっと引き継がれているかもしれないと思うとそれだけでもワクワクする話です。

スポンサードリンク

関連記事

ブックレビュー|あなたの人生の物語/テッド・チャン

久しぶりにSF小説を読みました。テッド・チャン「あなたの人生の物語」。ヒューゴー賞、ネビュラ

記事を読む

ブックレビュー|ブラインドサイト/ピーター・ワッツ

昨年10月に邦訳されたばかりのハードSFです。 物語はいわゆるファースト・コンタクト

記事を読む

ブックレビュー|蟻地獄/板倉俊之

本当は"トリガー"を読みたかったのですが、無かったのでこちら。インパルスの板倉俊之の2作目の小説

記事を読む

ブックレビュー|凹凸を楽しむ 東京 スリバチ 地形散歩/皆川 典久

世の中の一部の方、特に男性に多いようなのですが、地図を見るのが大好きという人種がいます。中学生の時の

記事を読む

ブックレビュー 芳賀ひらく – 江戸東京地形の謎、江戸の崖 東京の崖

「ブラタモリ」の視聴率が良いようです。私のように20年以上タモリ倶楽部を見ている視聴者にとっては2度

記事を読む

ゲーミフィケーション<ゲーム>がビジネスを変える/井上明人

ブックレビュー|ゲーミフィケーション<ゲーム>がビジネスを変える/井上明人

ちょうど今から1年くらい前に発売された本です。 ゲーミフィケーションについてその定義、

記事を読む

人生は勉強より「世渡り力」だ!/岡野雅行

ブックレビュー|人生は勉強より「世渡り力」だ!/岡野雅行

社員6人の下町の町工場を経営する著者の岡野雅行さん。 針穴の直径が0.08ミリという世

記事を読む

ブックレビュー|Self-Reference ENGINE/円城 塔

Self-Reference ENGINE/円城 塔 - 2013年のフィリップ・K・ディッ

記事を読む

超弦理論入門

ブックレビュー|大栗先生の超弦理論入門/大栗博司

子供の頃、科学雑誌「Newton」が大好きだったけど、大人になってフツーの冷めたサラリーマン

記事を読む

ブックレビュー|宇宙が始まる前には何があったのか? – A UNIVERSE FROM NOTHING ローレンス・クラウス Lawrence M. Krauss

現代物理学が辿り着いた、最新の宇宙像について解説した一般向け書籍の中では間違いなく最高の一冊。著者は

記事を読む

ad

Amazon Echo
Amazon Echoでスマート電源プラグをコントロール|Google Homeと比較してみた

Amazon Echoが届く  2014年に発売されたAmazon

ブックレビュー|火山で読み解く古事記の謎

 2017年9月下旬頃から鹿児島県の新燃岳の火山活動が活発になり、10

Belkin WeMo Mini & Goole Home mini
Google Home miniで家電操作|WiFi電源コンセントBelkin WeMo Miniとの連携

Google Home miniを購入  2017年10月5

Logitech Extreme 3D Pro ジョイスティック
Logitech Extreme 3D Pro ジョイスティック Google Earth フライトシミュレータでの設定

 先日SteamのセールでMicrosoft Flight Simul

dretec ドリテック 室内・室外温度計 O-285IV
dretec ドリテック 室内・室外温度計 O-285IV

 朝の出勤前に屋外の気温がどのくらいなのかわかると、服装を決め

→もっと見る

  • Kazuyoshi
    都内の某SIerに勤めるエンジニア。自然科学、光学機器、模型に興味あり。気象予報士の資格を持っています。
    about.me
PAGE TOP ↑