ブックレビュー|ブラインドサイト/ピーター・ワッツ

公開日: : 最終更新日:2014/12/29 ブックレビュー

ブラインドサイト〈上〉 (創元SF文庫) ブラインドサイト〈下〉 (創元SF文庫)

昨年10月に邦訳されたばかりのハードSFです。

物語はいわゆるファースト・コンタクトモノ。

カイパーベルトに浮かぶ褐色矮星(作品中では日本の実在する天文学者、大朝由美子にちなんでオオオアサ放射源と呼ばれている)の周回軌道を舞台に人類とは全く異なる進化を遂げた異星人との駆け引きが繰り広げられます。

隊の指揮官が”吸血鬼”だったり、宇宙航行技術に一種の量子テレポーテーションのようなものが使われていたり、眉唾モノのアイテムが登場しますが、この作者であるピーター・ワッツという方は海洋生物学の博士号を持っている学者だそうでして、参考文献のところで、ハードSFらしい説明を加えています。でもこれ作品中で説明してもらいたかったな。

で、既存の”ファースト・コンタクトモノ”と比べて何がユニークかというと、本作品では”意識と知性”という難しテーマをメインに据えているところです。カール・セーガン的な人類を超越した理性(道徳観)を持つものでもなく、B級SF的な明らかに敵対する存在でもなく、とにかく”何者か?何を考えているか?そもそもこいつは知的生命体なのか?”みたいな展開が物語の後半まで続き、それを明らかにしていく為の具体的な調査プロセスが読んでいて面白く感じられます。

しかし、結局本作品に登場する異星人が何者だったのか、という点については私には難しく答えを理解できませんでした。”意識が知性の邪魔をする”—極端な解釈をすれば、”意識”を持たずして、地球上でいうところのミツバチや蟻ような生命が恒星間航行技術を本能的に身に付ける可能性がある、というか、そちらのほうが自然淘汰的に有利で、宇宙はそんな生命に溢れているということか。だとしたらこれまでの宇宙と地球外生命に対するイメージが大きく変わります。本作品を評価するとしたら、そんな新しい考え方を提示したところでしょうか。

先日「クラウド・アトラス」を読んだばかりなので比較的さらっと読めましたが、短編ならともかく、長編小説であればもう少しエンターテイメント的な要素があっても良かったかなと思いました。続編も予定されているようなので期待することにしましょう。

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  • Kazuyoshi
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