ブックレビュー|あなたの人生の物語/テッド・チャン
久しぶりにSF小説を読みました。テッド・チャン「あなたの人生の物語」。ヒューゴー賞、ネビュラ賞をはじめ、数々の賞を受賞した短編小説が収められています。
日本でも多くのレビューで高く評価されていて、”ファーストコンタクト”モノもあり、ということで期待して読んだのですが、昔好きだったグレゴリー・ベンフォードやグレッグ・ベア、デイビット・プリンなどのようなSFとはまた違った趣で、非日常的な壮大な情景を思い浮かべることもなく、また古典的クラークのような読後の恍惚感を感じることも残念ながらありませんでした。
特に「作品覚え書き」にあるオイラーの公式に関する記述。クラークと同じ、というかそれ以下のことが書いてあるではないですか。
むしろ私が読んだ中ではジェイムズ・ティプトリー・Jr.やルーディ・ラッカーを想起させるような、数学や物理学、言語学がベースにあるのだけど、派手に物語が展開していく訳でもなく、ただ淡々と物語が語られていく、そんな内容でした。
これほど高い評価を受けているのに何故?学生の頃のように平日の晩に徹夜で上下巻800ページを読む余裕も無くなった今、もはや私の感受性も衰えてしまったのでしょうか、、、。
とはいいつつ、次は昨年10月に邦訳されたばかりでテッド・チャンも推薦しているという「ブラインドサイト」を読んでみようと思っています。
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